kyotomedtrackandfield’s diary

ー京都大学医学部陸上部の公式ブログー

グラウンドを離れ

皆さんご無沙汰しております、2回の杉本です。

近況を報告させていただきます。


ごく一部の人にしかお伝えしていなかったのですが、昨年の夏、陸上シーズンが終わった直後に、医学部陸上部を半年間休ませていただくことにしました。


ご存知の方も多いかと思いますが、私は陸上だけでなく競技かるた(百人一首)にも取り組んでおります。 3月末に控えている重要な大会(医陸で言うと西医体クラスの重要度です)に向け、半年間しっかりかるたに練習時間を割きたいという思いで、休部を決断しました。この大会が終われば再び農Gに戻らせていただこうと思っているので、そのときはまた一緒に走ってもらえると嬉しいです。もう少しの間ご迷惑をおかけします🙇‍♂️


そんなわけで、少しだけかるたの話をさせてもらいます。つい先日(1月11日)に、近江神宮勧学館にて、第66期名人位・第64期クイーン位決定戦が行われました。


名人位、クイーン位はそれぞれ男子選手、女子選手の中で毎年ただ一人だけに与えられる、最高峰のタイトルです。名人戦では、挑戦者と前年度の名人が戦います。そこまでの道は遠く、まず四段以上の段位を獲得していることが必要で、その上で東日本・西日本それぞれで開催されるトーナメント形式の予選会で優勝し、さらにその東西の優勝者同士の対戦で2勝先取して、ようやくこの名人戦に挑むことを許されます。


第65期名人は京大のOB・粂原圭太郎さんで、今年初の防衛戦に挑まれました。対する挑戦者は第59〜61期名人の岸田諭 八段。3試合先取の勝負です。挑戦者が初戦を僅差で制すと、2試合目も僅差で勝利、名人が追い込まれます。しかし名人が3試合目を僅差で奪い返すと、4試合目も勝利を収め、勝負は5試合目にもつれることに。最終戦は終始流れを渡さなかった名人が勝利し、初防衛に成功。粂原さんは第66期名人位を獲得されました。


粂原さんは、大学をご卒業された今でも、私たち後輩にたくさんのメッセージをくださいます。「社会人になって練習時間が減るから弱くなるなんて言っちゃいけないよ。1回の練習で何を意識してどう練習するか。効率考えるようになるからむしろ強くなるはずだ。」この言葉は、今年大学院を卒業される方にお話しされていたものです。粂原さんは91年生まれで、今は塾経営、執筆活動などで生計を立てていらっしゃいます。粂原さんに限らず、競技かるたの世界にはプロ制度がないため、社会人になってからも高い競技レベルを維持されている方は、練習時間や環境の確保等の点で相当な苦労をされています。今年の挑戦者の岸田さんも32歳。大阪大学医学部保健学科出身で、学生時代からお忙しかったことでしょう。改めて振り返ると、粂原さんのこの言葉には強いご覚悟が、重ねられた努力が滲んでいます。


そしてこの言葉は、陸上界で言うところの「練習=質×量」という考え方と通じるものがある、と感じました。たとえば長距離で言えば、ただ何も考えずに走行距離を増やすだけでは成果は得られず、フォームを良くするために必要な筋肉を自主的に鍛えたり、疲労度合いを見てあえてスピード練の本数を減らしたり、フォームが崩れないように意識しながら走ったりすることが重要だ、というような話ですね。どの世界でも共通して大切なのです。


また、粂原さんは少し異色な戦い方をされることでも知られています。(詳しくは(昨年の記事ですが)こちら https://number.bunshun.jp/articles/amp/838441?page=3 を参照してください。)抽象的な書き方でしかお伝えできないのですが、周りの方のアドバイスを取り入れる柔軟性と、周りに何を言われようと流されず信念を貫く強い意志が、そのような戦い方を可能にして粂原さんの競技者としての圧倒的な強さを保障しているのだ、と存じます。この、柔軟性と信念が良いバランスを保っているとき、一段高いレベルに手が届くのではないでしょうか。陸上に置き換えるのは少し難しいですが、たとえば勉強や研究活動でも同じことが言えると思います。抽象的でわかりにくい書き方になってしまいましたが、感じ取っていただければ幸いです。


それでは、もう少しかるたを頑張ってからグラウンドに戻らせていただきます。

また4月にお会いしましょう。

 

杉本凌太郎