kyotomedtrackandfield’s diary

ー京都大学医学部陸上部の公式ブログー

勝手にバトル開幕

 明けましておめでとうございます。3回生の中村です。女子です。

 年末年始はいかがでしたか? 私は、こんなに楽しいものだったっけ⁈と思いながら過ごしておりました。医学科は、学年が上がるにつれて冬休みが長くなるんですよね(4回生までは)。一般教養を受けている1回生は社会人並みの短さだし、2回生はレポートたくさん+年始に試験だし、3回生になって初めてゆったりとした年末年始だったように思います。加えて昨年のお正月、私の地元はバッタバタしてましたからね… 今年は安寧を願います。

 

 年明けは抱負を述べるのが常識だと思うのですが、私はガン無視して昨年の思い出を書きます。さらに、陸上部のブログだということも無視します。

 昨年は推しの小説家さんのサイン会に初めて行くことができました。中1からずっと好きな作家さんと初めてお話しできて、それはもう本当に夢のような時間でした。はー、良い人だったなあーー!!

 その日をきっかけに、その作家さんの本を読み返すブームが来て、2日で1冊のペースで読んでいたんです。ここで私は気づきます。

 

1ヶ月に10冊、読めるのでは…?

 

〜冊数チャレンジ、開幕〜 

 

 楽しんで読めば良いものを、私は仮想敵と戦うイベントに変換してしまったのです。つらい。

 仮想敵が囁きます。「お前、本好きって自称できるんか?」

 ”本好き”の私ですが、名作と呼ばれるものは全然読んでいないし、生きている作家の本ばかり読んでいるし、壁一面本棚で埋め尽くされている訳ではないし……コンプレックスがのしかかります。それに打ち克つには、もう、数字で黙らせるしかないっ!月10冊、月10冊。文学好きなのに、理系の考え方。

 そして私は、3ヶ月間、勝ちました。10月は10冊、11月は12冊、12月は17冊。わっしょーい!ぱふぱふどんどーん!

 2024年は73冊の本を読みました。25.26冊だった一昨年、昨年からの大きな進歩です。ここで私は思います。

 

他の人にも、おすすめしたいなぁ…

 

ビブリオバトル、開幕〜

 

 1人で感想文でも書いていれば良いものを、私は誰かに知らしめたいと思ってしまったのです。押し付けがましいことは分かっているんです。でも!語りたいの!!

 

 皆さんもうお分かりですね。ここはビブリオバトルの会場です。たった今、変えてしまったのです。それも、部活のブログという、公共の場所を。

 

 私が大学生になってから読んだ128冊のなかから選びます。

 

①「死にがいを求めて生きているの」朝井リョウ

 タイトルから不穏ですよね〜。生きがいと呼べるものが見つからず、エネルギーを向ける先に迷う若者の半生を描いた物語です。この青年には、周りからは「なんで仲が良いの?」と思われる、正反対の性格の幼なじみがいます。その2人の歪な関係から、平成生まれの生き方が浮かび上がります。

 自分は価値のある人間なのか、自身に問いかけたことのある人におすすめです。

 

②「逃亡の書 西へ東へ道つなぎ」前川仁之

 韓国・済州島に避難してきたイエメン難民を、著者ご自身が訪ねる紀行文です。しかし中盤では、大戦中にスペイン-フランス間を亡命した音楽家パウ・カザルスとユダヤ系作家ベンヤミンの足取りを追い、終盤では日本国内のウクライナ難民にも会いに行きます。スペイン-フランスを自転車で周ったり、9日間でウクライナ語を覚えて支援に加わったりなど、著者のバイタリティから目が離せません。

 戦争について何か知りたいなと思った方(私です)、旅行好きの方、語学好きの方におすすめです。

 

③「おいしいごはんが食べられますように」高瀬隼子

 2022年の芥川賞受賞作です。ごはんの考え方が異なる3人の関わり、と言ってしまうのは簡単なのですが、それ以上に人生観が浮き彫りになっていて、恐ろしい…!仕事や恋愛、そして「配慮」に関する考え方って、一人ひとり違ってモヤっとすることがありますよね。それらを「ごはん」という一つのモチーフで描いているのがすごいんです。でも考えてみれば、ごはんって衣食住にも三大欲求にも数えられていますよね。ごはんの捉え方は、その人の思考の根幹にも通ずるのかも知れません。

 ごはん好きの方、そして、医陸に多い、ひとのぶんまで頑張ってしまうあなたにおすすめです。

 

④「ハンチバック」市川沙央

 こちらも2023年の芥川賞を受賞した作品です。著者の市川さんは先天性ミオパチーを患っており、電動車椅子で移動し、気管切開もされています。この本の主人公は市川さんと同じ病を患っている女性で、健常者向けに作られたこの世界に鋭い眼差しを送ります。怒りが炸裂したワードセンスも強烈で、私からは絶対に出てこない視点と文章の集積でした。私は今まで健常者側の視点しか持ち合わせていなかったので、読んでいる間は己の浅はかさに苦しくなるほどでした。

 是非ともすべての人に読んで頂きたいのですが、ページを捲るのは元気な時のみでお願いします。

 

⑤「最後の息子吉田修一

 芥川賞の選考委員も務める人気作家のデビュー作です。3篇収録されており、どれも短いのもポイント。表題作にしてデビュー作の「最後の息子」も良いのですが、私は「Water」が超好き!高校の小さな水泳部のお話なのですが、高校生の頭の中って文章にすると確かにこうなるよなーーーという表現が盛り沢山なんです。嬉しい時の気持ちを「豚でもいたら、追いかけまわしたい気分だ。」って書くんですよ?凄すぎません?

 高校生活を高い解像度で再発見したい方はもちろん、純文学というものを読んでみたいなぁという方への最初の一冊としてもおすすめです。

 

⑥「死体は語る」上野正彦

 こちらは法医学者であり監察医の先生によるノンフィクションです。上野先生が実際に担当された解剖の中で印象的なものが取り上げられています。3回生前期の法医学の試験後に読んだのですが、勉強がてら試験前に読めばよかったかも知れません…。少々専門用語も出てきますので、法医学の授業を受けてからのほうが読みやすいかとは思いますが、一般向けの本なので知識が全く無くても楽しめるでしょう。

 昨今はドラマも流行りましたし、法医学って楽しそうだな〜と思っている方に加え、ミステリー好きの方にもおすすめです。

 

⑦「空が青いから白をえらんだのです」

 詩集です。あえて作者とサブタイトルは書きません。それだけでも調べてみてください。以下に書籍のURLを貼っておきます。https://www.shinchosha.co.jp/book/135241/

 タイトルになっているのは「くも」という詩の本文です。これだけでも、この詩の作者がどれだけ優しい心の持ち主かわかる気がしませんか。また、時折差し込まれる、編者の寮美千子さんのコメントも秀逸。

 性善説を信じたくなる一冊です。

 

⑧「方舟」夕木春央

 ミステリーなのであらすじは書きません!もう、ほんっとうに面白かった!!読んでくれた方がいらっしゃいましたら、感想を語り合いませんか?!

 

 以上8冊で、皆さんを巻き込んだビブリオバトルは閉幕です。いかがでしたでしょうか?「逃亡の書」「最後の息子」「死体は語る」「方舟」に関してはお貸しすることができます。読んでみたい本があったらLINEしてくださーい!部活の時に持っていきます。

 お付き合い頂きありがとうございました。大変失礼致しましたー!